『宇宙戦艦ヤマト』放送50周年

改めて『宇宙戦艦ヤマト』というのは、ものすごい作品だと感じる。
今っぽく言えば「コンテンツ」なのですが、今回はそんな言葉では置き換えたくないので「作品」と言います。
10/6は、そんな『宇宙戦艦ヤマト』放送50周年の節目となる記念日でした。

この日、上京した私の目的一つ目。
交響組曲 宇宙戦艦ヤマト(ギャラクシティ 西新井文化ホール)

必ずしもイベントである必要はないけれど「ここに行ったら皆に会える」と思える場所があることが嬉しい。
開場、開演までの待ち時間は、あちらこちらで「おめでとうございます!」の祝辞が自然発生していました。
(「おめでとうございます!」が開口一番の挨拶になっていたりしたw)
会場前に設置されているストリートピアノでは、開場まで有志によるヤマト音楽の生演奏。
さながら大人の文化祭?という雰囲気もありつつ。
また、最近の恒例企画になりつつもありますが…今回も有志で祝花を贈りました!(幹事さんに感謝!)

「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」の全てを演奏した演奏会は過去にも前例がなく、発表から40年以上の歳月を経て、実質的に今回が”初演”となる記念すべきコンサート。
この歴史的な企画はそもそも、おーけすとら・ぴとれ座の指揮者・池田開渡さんが発案し、同じくヤマトの大ファンであるプロデューサーとホール責任者の方とで企画し、宮川彬良さんのところに相談しに行ったのがそもそもの発端とのことです。
故・宮川泰先生は基本的に楽譜を残されていなかったのですが、現在進行中の『ヤマトよ永遠に REBEL3199』の音楽のために何か資料がないか、彬良先生がご実家に探しに行かれたときに見つかったのがこの交響組曲の楽譜だったそうで、それから一気に企画実現の可能性が高まったとのことでした。
もっとも、その楽譜は実際に演奏されたものとは違う部分もあるため(当時は録音現場で楽譜を変更することがよくあった)さらに楽団の方による地道な検証作業と耳コピによって、ようやく完成に漕ぎつけたとのこと。

元の楽譜がある、とは言え…相当にヤマトが大好きでなければ、こんな企画はとてもできないと思うのですが…彬良先生曰く「ゆうがたクインテットを子供の頃に観ていた世代による楽団」の皆さん、見事に呼吸の合った統率の取れた演奏で、またその奏でる音は大変瑞々しい若さに溢れていて…本当になんていきいきと演奏されるのかと驚くほど。
楽団員の構成は、決してヤマトが好きな方ばかりではないと思うのですが、楽団全体でそのイメージや世界観の統一まできっちりなされていたのではと想像…さすがクインテット世代!(←勝手に呼びたいだけじゃw)

私も聴いている間、本当にずっと旋律に身を任せて楽しくて…でも、良く知っている曲であるが故に終わりもはっきりと見えてしまって「明日への希望」あたりではもう、この素晴らしい演奏をずっと聴いていたい…でももうすぐ終わってしまう…と、終わりに近づくにつれどんどん悲しくなる…という感情のせめぎ合いで。
そんな中での終演。そして割れんばかりの拍手のあとに続く、まさかのアンコールが「さらば 地球よ」のアカペラから続く『さらば宇宙戦艦ヤマト』劇中バージョンの「大いなる愛」!
アンコールについて、第二部冒頭のトークであらかじめ彬良先生から予告めいたものはありましたが、それでも「そう来る!?」と驚くサプライズで…いやもう、驚きとかそんな感情より先に感極まって目が潤んでいましたよ…。
本当に、ヤマト愛がある人たちじゃなければできない構成でした、このコンサート。

最後は、鳴りやまぬ拍手と共に、我らが国歌「宇宙戦艦ヤマト」の斉唱で終わりました。
(声出しの叶わないコロナ禍を経て尚更に「これを歌わなきゃ終われない!」という恒例行事になりつつありますね💦)

今回、発表から40年以上を経ての”初演”となった「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」ですが、その事実以上に、自ら企画してその志を受け継いでくれたのが、おーけすとら・ぴとれ座という非常に若い演奏家たちによって構成された楽団だということに、非常に大きな意義を感じています。
「良い音楽は、世代を超えて受け継がれていくもの」という気持ちは頭の片隅に常にありますが、今回のコンサートほど、実感を伴って意識する機会は過去にもなかったかもしれません。
この言葉通りに、まさに世代を超えて受け継いでくれる人たちが現れたのですから。
そして、今回多くの方の尽力によってやっと成された楽譜の再現。
これをさらなる世代へ引き継ぎ、より多くの演奏家たちの手によって繰り返し再演されていく未来も願ってやみません。

そして終了後、同好の多くが次の会場である新宿ピカデリー、または各ライブビューイング劇場へそのまま移動。
大人の文化祭の次は、なんだか大人の遠足みたいな状況になってた気がする…w

『宇宙戦艦ヤマト』放送50周年記念上映会(新宿ピカデリー)

世代も異なりますし、リメイクシリーズからの視聴ですので、この空間においては新参も新参。
敷居の高さは、普段ファン活動したり劇場鑑賞していても特に感じることはないのですが(リメイクは若い世代も多いし、自分より若い方ともたくさん交流があるので)こういう場に来ると、世代的にどうしても引け目を感じてしまうところはあり…作品の歴史がそもそも自分の年齢より長いので、ある程度の世代差は仕方ないところではあります。
ですから正直、この場にいてもいいものか…という気持ちもありましたが、8㎜フィルム版、幻のノンテロップ版OP・EDの上映など、純粋に「観たい!」という気持ちの方が大きくて、何だか私、いつのまにかちゃんと(という表現は変かもしれないですが💦)骨の髄までヤマトファンになっていたんだなあ私…と、自分でもビックリで。
あとシンプルに、めちゃくちゃトークショーを楽しみにしておりました。
出渕さんは2199の舞台挨拶であったり、とあるイベントでお話させていただいたり…とそこそこご縁があったのですが、そういえば庵野さんを生で拝むのは初めてだったのです。エヴァもシン・シリーズも散々観ているのにね!

4K上映でも近いことを感じましたが、古さより何より「こんな凄まじい作品が50年も前に」という感想の方が先に来て。
そして、本当に第1話…掴みが素晴らしくて、言葉を選ばずに言うと「よくできている」初回なのです。
手法としては当然、今の感覚で観ると当然古びたところはあるのですが、現在では多くの作品に溢れる「お手本」とも言えるスタンダードな構成と手法でがっちり固められていて、この手法がまさにこの作品から始まったのだ…と思うと、本当にこれはそのまま最初の形で綺麗に姿で残し、後世に伝えるべきものだと。
また、これはリメイクとは全く別の観点で捉えて継承していくべき、唯一無二の個性だと。

そして、改めてその凄さに目を見張ると共に、それはもう、当時目撃した子供は心を鷲掴みにされるよなあ…と。
当時は当然裏番組の録画などできず、時代背景的にはハイジに屈した方が多いのも承知していますが💦
まあハイジが半年も先行していた上に作品としてもレベルが高かったので、そりゃー仕方ないな…と思いますが、それを踏まえると、あの裏で放送するって、今の感覚でもめちゃくちゃチャレンジングなことしている…よくやったなあ…。

「ヤマトが好き」「ヤマトのために」というファンの想いが、不思議な縁と力を生んでいく作品『宇宙戦艦ヤマト』。
それは必ずしも形に残るものだけではなく、全ては「何かしたい」という想いから始まり、やがて実を結んでいく。
この日のトークショーでも「ヤマトは、観た人に『何かしなきゃいけない』」と思わせる作品」というお話がありましたけど、まさにそうで、かつて小さなその種を受け取った多くの人たちの想いが結実した結果のひとつが、まさにこの日のイベントであったように、一人一人の「ヤマトがあるから」何かをしたい…と思う気持ちが、文字通りヤマトを動かしていく。
稀有な作品だと思うし、私もそうありたいし、その意志の象徴である点も含めて『宇宙戦艦ヤマト』という艦が好きで。
だからこそきっと、この「好き」は、ほかのどんな作品へも代えが効かないのです。

また、昼の交響組曲コンサートと、夜の50周年記念上映。
構成する世代も、実現に向けて関わった人間も違えど、そこに共通するのは”継承”の二文字でした。
この二つが同日…狙ったにしても奇跡のようで、本当に貴重な体験だったのでした。

しかし…1日でこんなに何回も本気の「国歌斉唱」することになるとは思わなかったなあーw